Posted By ちゅろめ

Created at 2018/09/08 15:57:20
Updated at 2018/12/15 00:30:01

数少ないalps互換軸採用の現行キーボード

キーボード。windows95よりも後に生まれた私にとっては人生で一番長く使っている機器かもしれません、そこまで多くの時間を共に過ごした機器に拘ってしまうのは至極当然なことでしょう。

今回はそんなキーボードの中でもメカニカルスイッチ、とりわけ絶版となった今でもマニアを引き付けてやまない「alps軸」の互換品を採用したキーボードの紹介です。

【KB Paradise V60 MTS】

amazonにて一万千円ほどで新品購入しました。

本機はメカニカルキーボードですが、おなじみのcherryやkailh、gateron等のスイッチを採用しているのではありません。
皆さんは「alps軸」と呼ばれるキースイッチをご存知でしょうか?
alps軸とはwindowsが台頭する以前から日本のアルプス電気が生産していたスイッチです。
世界中のいろんなコンピューターのキーボードに使用され、その多種多様な打鍵感から多くのキーボードマニアを虜にしています。

今回のV60 MTSにはそんなalps軸の互換品である「matiasスイッチ」が採用されています。
その昔、alps軸の打鍵感に魅了されたカナダのmatias氏はalps軸生産終了の話を耳にし、在庫されているalps軸を買いあさりました。そんなmatias氏が作成したalps軸に似ている別のスイッチがmatiasスイッチです。

さてmatiasスイッチの成り立ちについて説明したところで、キーボード本体の紹介に移りたいと思います。

箱と付属品です。
箱はダンボールの表面そのままですが大きい「V60」の文字が光ります。中々高級感のあるデザインになっていて所有欲はかなり満たされますね。

付属品は右から説明書、キー同時押しの解説書、接続用のケーブル、キートップ引き抜き工具、交換用のキートップです。
60%キーボードである本機はFnキーなどを使用した同時押しで物理キー数以上の入力に対応しているため、コンパクトながらテンキーレスキーボードと張り合えるくらいには入力の幅が広くなっていると思います。

キーの引き抜き工具はよくあるタイプですが正直言ってワイヤータイプが全てにおいて勝ります、このタイプはキートップを傷つけてしまったり工具自体が折れてしまう事があるのです。

背面の画像です。
チルトスタンドはありません、キーマップを変更するためのディップスイッチと滑り止め用のゴムが四つ、高級感のあるアルミ製のラベルが装着されています。

五つのディップスイッチの操作によりキーマップが変更できる事は本機の魅力のひとつです、付属の交換用キートップと併用することで自分にあった配列にすることが出来ます。matiasは旧来mac界隈で知名度の高かったスイッチですのでもちろんMac用のコマンドキーなんかのキートップも付属します。
マルチなプラットフォームに対応しているのは素直にうれしいですね。


ステップです。
先述したようにチルトスタンドがないので筐体自体が角度をつけています。
メカニカルキーボードに多いキートップでカーブを生む構造ですので別段使いにくいことはないと思います。もちろんIBMバックリングや富士通メンブレンのように鉄板自体にカーブをかけるわけにもいきませんからあの芸術的なカーブド構造には劣るのでしょうが。


キースイッチとキートップです。
スイッチはmatias製のクリックタイプスイッチを採用、alps正規軸との差は筐体が透明になっていることと接点の簡略化ですね。
キートップは一時期のrazer程でもありませんが厚くもなく、昇華印刷や二色成型でもないのでお世辞にも質がいいとはいえない代物です。
底打ちするメカニカルキーボードにおいて荷重の伝わるキートップの重要性は高いのでここはマイナスポイントです。
まぁ新品で一万円そこらという価格を考慮すれば値段相応って話ですけれども。
諭吉一枚で二色成型使いたいならcherryMXのprogres touchでも使ってりゃいいんだよ。


各部の紹介はこんな感じです。
60%というコンパクトさに同時押しを使用しての豊富な入力の幅、剛性のある筐体にシンプルなデザインはいかにも「手堅いキーボード」といった印象を受けます。
自作キーボードの台頭によりこの手の配列もかなり敷居が下がりましたし別段悪い印象を受けるところのない鍵盤ですね。


さて、筐体や配列は好みでしかないのでここからは本機の「ウリ」であるmatiasスイッチの紹介に入りたいと思います。

誉れ高きalpsの正規軸にはクリックやタクタイルといった違いと荷重による違いにより青茶緑白黒黄オレンジピンクetc…と今のcherryと比べても引けをとらない様々な種類があります。
中でも白軸や黒軸には接点周りの作り等を簡略化した「簡易軸」と呼ばれるスイッチが存在しており、こちらはalps正規軸が出回らなくなってからcherryが覇権を握るまでの数年間Filcoなどのキーボードにも採用されていました。

この簡易軸は「簡易」という名に違わず作りだけでなく打鍵感も正規軸に劣るものとなっており、どこか不安定なストロークなど雑な打ち心地がします。


本機に採用されているmatiasスイッチです。
alpsマウントでalps正規軸との違いは薄っぺらな銅板となっている接点や透明になった筐体です。
触った感じちゅろめスペシャル測定器によるとクリック感の終わりまでで荷重は65g程、ストロークは3.5mmくらい。
正規白軸などと同じような板バネを採用しておりcherry青のそれよりも大胆なクリック感がします。
接点の簡略化が原因なのか濁った音が混じり、戻り時にはどこか引っかかるような感触がします。

当たり前ですがcherryにはこんなのありませんね、触ったことのない方からすると珍しいのではないのでしょうか。

感の良い諸君はお気づきかもしれませんが先述した「簡易軸」に近しい何かです。
なんだこれ、matiasスイッチがどんなものだか気になってたのに残念です。
もちろん簡易も決して悪いスイッチではないのですが正規軸を触った身からしてみるとやはり爽快さに欠けますね。
特に接点の簡略化によって戻りが不安定なんですよ、スッっと戻ってこないんです、ガチャガチャした感じ。


比較用のalps正規白軸です。
簡易軸との大きな違いはその接点、薄っぺらな銅板ではなく樹脂製の板と金属が組み合わさったつくりになっています。
接点が安定しているお陰かストロークに違和感がないんですよね、快適に動いてくれます。

この白軸自体はそこまでよくもないのですが潤滑剤を散布することでさらに滑らかなストロークを生み出してくれます。
分解が容易なalps軸にはもってこいのメンテナンス方法です。

※総評
筐体や配列は申し分のないキーボードです。
後半ボロクソに言いましたがmatiasスイッチもスイッチとしては品質の悪いモノでは決してなく、cherryとは一味も二味も違う打鍵感を味あわせてくれると思います。
一万円と価格もそこまで高くないので省スペースなキーボードを探している、cherryとは違う打鍵感を味わってみたいなどなど、という場合には選択肢に入れても問題ないでしょう。
デザインも奇抜じゃないので配列さえ慣れれば誰にでもお勧めできるキーボードと言えます。

 

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でも私は残念ながら正規alps軸も複数触っているのでこの打鍵感では満足できません。
このキーボードを買った目的は別にあります。

買ったその日に保障とバイバイする男

先述したようにこのmatiasスイッチはalpsマウントのため正規alps軸と100%互換性のあるpcbを採用しています。
絶版しているので状態のいいalps軸採用のキーボードは中々お目にかかれないのですよ。
自作キーボードと言う選択肢はありますがalpsのpcbは海外輸入しか選択肢がなく学生の私には面倒です。
V60 MTSはamazonで買える唯一のalpsマウントpcbと筐体という時点で私にとっては絶対的な価値があります。こんなこと書いたらメーカーに怒られそう。

今回はハンダを吸い取ってmatiasスイッチを全て外し別途他のキーボードから採取していた正規白軸に入れ替えました。
打鍵感は簡易など比較にならないレベルの滑らかさですし綺麗なPCBと筐体、プレートのお陰でこれこそまさに「現代を生きるalps軸」といった装いです。

邪道かもしれませんがこの製品はそれだけ魅力的です。
alps軸改造マニアの方もこの製品をベースに一台くみ上げてみてもいいんじゃないでしょうか。

 

KB Paradise V60 MTS、人によって用途は様々かもしれませんがかなり魅力的な一品です。
いつもと違った打鍵感を味わうための相棒として、古きよき打鍵感を復活させるためのベースとして、多くのマニアにお勧めできる鍵盤と言えるでしょう。
ぜひ本機で、cherryにはない大胆な打鍵感を味わってみてください。



※ここまで蛇足を書いておいてなんですがあくまでレビューサイトなのでmatiasのmac用キーボードだとかSKCMがどうとかの細かい話は抜きにしてます。
もしかしたら若干違っている点があるかと思いますがそういった事情があるのでこれをみて苛立ったマニアの方もご了承していただけるとありがたいです。