Posted By Reviqa-Twitter担当

Created at 2018/10/30 18:34:03
Updated at 2019/05/29 00:30:02

【Reviqa.net 公式レビュー】気軽に迫力のある音を、様々な環境で試したい方向け

今回、XROUND様からXPUMPをお借りする事が出来ました。
実は店頭で何度か試していたのですが、今回、こういうタイミングで自宅で試せる機会が出来た事に深く感謝致します。
というわけで、XPUMPのレビューです。


■その前に、まずXROUNDとはどんなメーカーか

XROUNDは、正確にはXROUND audioとして、Embrace Audio Labが運営(イコールかもですが)する、新規オーディオメーカーです。
XROUNDとは、簡単に言えば『ほぼリアルタイムで音を解析し、それをほぼリアルタイムでサラウンド化する技術』のようです。
そのXROUND技術が搭載された製品がXPUMPになるわけですが、ここだけ聞くと、ようは『「ああ、ようはバーチャルサラウンドデバイスね、あるある』となってしまう所です。
しかし、そうは問屋が卸さないのがXROUNDの凄い所なのです。
今後、例えばUSBヘッドフォンにXROUNDが搭載されたりした場合、一般の物よりもランクが上のサラウンドヘッドフォンが登場するかもしれません。
また、PCのサウンドデバイスにXROUNDが搭載されるだけで、より際立った音質で音を聞く事も出来るかもしれません。
そう考えると、今、オーディオ業界ではちょっと気になる存在しとしての地位を確保しようとしている印象です。

■仕様

型番:XRD-XP02
入力:microUSBデジタル入力(充電兼用/3.5mmステレオミニ
出力:3.5mmステレオミニ
スイッチ:XROUNDレベルボタン(OFF/1/2)/ボリューム/電源:モード切り替えスイッチ
プロセッサ:デュアルコアオーディオプロセッサ
サンプリング周波数:48KHz / 16bit
周波数特性:20Hz-20KHz, +/-0.1dB
最大出力:25mW into 32 - Ω load THD<0.01%, 20Hz - 20KHz, at max output
S/N比:>85dB, unweighted
電源:400mAhリチウムイオンバッテリー
サイズ:W9.2 x D2.7 x H1.55 cm
重さ:35g

 

(ボタンの所に1円玉載せた比較サイズ…小さい)

 

まず、この製品の画像を見ていただくとわかるかと思うのですが、本体自体は一般的なUSBメモリ型のオーディオプレーヤーのようなサイズです。
重量も軽く、内部に400mAhのバッテリーが搭載されていて、調べてみるとバッテリー駆動で7時間動作が可能らしいです(意外と長い)
本体以外にパッケージに同梱されるのは、オーディオケーブルにmicroUSBのケーブル、それに本体やケーブルをまとめて収納できる布製の袋になります。

口頭のみになりますが、USB-DACとして使う場合、PCとXPUMP本体をUSBで繋ぎ、接続した出力に合わせてスライドスイッチで電源をON/OFFすだけで使用が可能になります。
XP02という型番が表示されることから、如何に普通のUSB-DACと違うのかがわかります。
実際の使用は、そこからさらに、XROUNDのロゴが書かれた面に丸いボタンを押すことで、XROUNDの機能使う事になります。

と、ここまで書く分には普通のUSB-DACじゃね?って話になるのですが、XPUMPはそういう製品ではありません。
本体の出力用のジャックの反対側にINと書かれたジャックが存在します。
実はこの製品、XROUNDの機能をPC以外でも使用出来るようにするために設計されています。
早い話が『気軽に使えるDSPユニット』としての利用が可能なのです。
そのために仕様も書きましたが、ほぼリアルタイムで演算するために、デュアルコアのオーディオプロセッサ(略してDSPとか言わない)を搭載しているぐらいです。
 


つまり何が出来るか。

 

バッテリー搭載であるため、スマートフォンのジャックに挿した後、そこからヘッドフォンやイヤフォンをXPUMP本体に挿せば、本当に気軽にサラウンドを味わう事が出来るという事になります。

 

『世界一コンパクトなホームシアター』

 

実際に使用すると、まさにこの言葉が適切とも言える臨場感は、流石の私でも伝えるのが難しくなります。
是非一度は何かしらの形で経験してもらいたい一品に出会えた事、正直、久々に胸が熱くなる思いです。


■音楽ファイルをテストしてみる

 

(こちらにヘッドフォン/イヤフォンを挿す)

 

(サウンドデバイスからの入力はこちら。コンデンサマイクは使えない)

 

環境は様々あるのですが、まずはメインPC。

ASUS ROG Strix X370-F Gamingです。
こちらのオンボードサウンドを利用してテストしてみます。
一応、Sound Blaster X-Fi Professional Audioもつけているのですが、中身的な差はオンボードでも殆ど差はありません
出力は通常のステレオで、ソフトウェアによる補正は一切かけない、つまりはサウンドデバイスそのものの音をそのままXPUMPに通す状況になります。
試す楽曲は以下の通り

・SawanoHiroyuki[nZk] shOut
・坂本真綾 gravity
・Phantasy Star Online2 OST3 Resonant Defensive - Alternative -

選曲にあまり意味はありまえん。
特に聞きなれている音源をそのまま聞いてみるのが一番良いと判断したというのもありますが、gravityだけはちょっと異色なイメージとして加えてみました。

実際にXROUNDがオフの時には、オンボードの素直な音が出力されます。
ケーブルの途中を経由する事で、ノイズやら何やらが入るのかなと思ったのですが、流石にそんな野暮ったい心配をする必要はありませんでした。
そしてXROUNDをオンにします。
すると、まず音の位相が若干変化したことがわかります。
ヘッドフォンやイヤフォンは、その特性上、頭の中から音が聞こえてしまう問題があるのですが、まずそれが軽減された感じに変化しました。
特にボーカルが、頭の中から額寄りな感じになた事に、開発された方は本当に何度も繰り返してここに辿り着いたのだなと感慨深いものが…。
また、左右の音も、平坦な音が細かく分解され、それを適切な位置で再配置するような印象です。
ひとつ間違えれば、これがオンボードのサウンドデバイスから出力された音とはわからなくなる感じでしょうか。

次にダイナミックモード(ようはLevel2)
全体的にはかなり迫力のある音になっているという印象です。
ひとつ面白いと感じたのは、元々低音は得意ではないスピーカーでも、かなり強めの臨場感が確保された点です。
筆者はロジクールのZ110BWを所有して愛用しているのですが、この製品、中~高音はそれなりなのですが、どうしても低音に不満が感じられる。
そこをこのXPUMPでサポートする事で不満が一気に消し飛んでしまいました。

(左がボリューム。右がすれライドの電源スイッチ。右側にするとイヤフォンやヘッドフォン向け、左にするとスピーカー向け)


特にResonant Defensive - Alternative -に関しては、ゲーム内のBGMをほぼそのまま収録という事もあり、ゲーム音源に非常に近い物なのですが…


鼻血が出た(本当


音酔いというわけではないのですが、広がる音に心地良くなるというのは、かなり珍しい状況です。
余談ですが、このXPUMPの検証中、何度音楽を聴きながら寝落ちをしたのかわかりません。
特にピアノの音は臨場感が格段に上がりましたし、静かな曲をスピーカーで再生させるだけで、そこは未体験のリラックスゾーンに。

と、ここまで書くとべた褒めなのですが、USB-DACを試していません。
簡単に言えば、XPUMPOそのものをサウンドデバイスにするだけなのですが、スペックを見る限りでは、一般的なUSBなサウンドデバイスです。

で、実際に試したのですが、こちらはXROUNDを使わない限りは、不満はあまりない素直な音が出力されます。
比較としてENEMAX AP001を用意しました。
筆者大好きVIAオーディオなのですが、好みの差はあれど、殆ど差がつかないのは、もはやUSBの仕様の問題ではないかなと思います。
ただ、逆に言えば、元々PCのサウンドデバイスとして歴史のあるVIA(正確には買収したメーカー?)と、ここ数年で立ち上がったメーカーが肩を並べているわけです。
その恐るべきレベルに驚愕してしまうのは私だけなのでしょうか。
また、その上でXROUNDをオンにすると…


ぶっちぎり!


臨場感や低音のブーストに関しては、もはや別世界の領域です。
総じて言えるのは『XROUNDはまだまだ進化の可能性を秘めている技術』という点です。
気軽にボタンを押すだけで、間違いなく価格以上の価値を見出す事が出来ます。
ヘッドフォンに搭載されればという事も上述しましたが、技術を考えれば、このコンパクトな本体であれば、まだまだ大きな価値があります。


■次にゲーム

ゲームの音を再配置する事で、ゲームになにか影響はあるのかという点も気になります。
特にFPSは、音の位置で相手の場所を特定する事が可能で、それは対戦型のゲームであれば尚更優位に状況の改善に結びつきます。
で、試したのは…

・Half-Life2
・FORTNITE
・GRID2
・MONSTER-HUNTER WORLD

まず、根本的に言いたいのは、やはりサラウンド感はあまり感じられない点。
元々が2chの出力で、かつ接続したのがヘッドセット。
ちなみにXROUNDはLevel2にしています。

確かに低音の強調がされる事で、臨場感は抜群に良くなりました。
特にGRID2は、テストプレー中にうなりを上げてしまう程のレベルにまで…。
ただ、思っていた以上にFPSとの相性は良くない。
サラウンドデバイスとしては、それを目的に選ぶ品というわけではないようです。
そして新しいタイトルであるMONSTER-HUNTER WORLD。


こえええええええええええええええっ!!!!!!!

 


SSはテスト用に行った先でいきなり、リオレウスに出会ったのですが、その音だけでもはや別のゲームです。
モンスターの足音ひとつひとつが重く、咆哮は脳にまで響き、ブレスの音は衝撃を受けるレベルにまで達します。
ゲームよって相性はありますが、よりリアルな音を楽しみたいユーザーには、恐るべき効果を発揮するデバイスという印象が強く残りました。

また、せっかくなのでスマートフォンのゲームも楽しんでみたいと思います。

・Fate/Grand Order
・ソードアートオンライン インテグラル・ファクター

使用する本体はXperia XZ1です。
そもそもが音質に評判のあるXZ1ですが、実際のゲームの音質にはそこまで大きなメリットを感じられていませんでした。
おそらく、根本的な音声ファイルが容量の削減のために劣化しているからだと思われますが、XPUMPの使用で大きく変化するのか。


しました!


サラウンド感が出て、かつ音全体のバランスも良くなったと感じられます。
スマートフォンでは、基本的にスピーカーでの出力を想定しているため、PCのような細かい音までは出力されない傾向です。
それが両タイトルとも、PCのゲームに負けないレベルにまで音質が向上しています。
なるほど…これがXROUNDの力なのかと思い知らされるのは、もしかしたらスマートフォンの方なのかもしれません。

 

■最後は動画

動画に関しては、リアルタイムの出力と、ローカルで保存したファイルをPC上で再生する事に。

まずはリアルタイム…つまりはTVです。
筆者のPCにはPT3を組み込んであります。
ようはその音の出力をSXSPUMP経由で聞けば良いだけなのですが、これはローカルで保存している動画も同じ。

音楽やゲームでも言えた事ですが、全体的な音がしっかりとバランスの良い広がりのある音へと変化しました。
ただ、ゲームに比べると、そこまで音質そのものは強くならない傾向です。
特にTVの音声は、若干変化があるかな程度でした(ドラマやスポ―ツ、アニメも含めて様々に確認)
それはローカル保存のファイルでも同様です。
唯一、野球やサッカーのような広いフィールドで、かつ映像のソース自体に歓声といった盛り上がりを生み出す音が組み込まれている部分は、も
対して、ドキュメンタリーといった内容では違いは、変化はありましたが実感しにくい傾向に。
逆に言えば、スポーツ観戦には抜群の効果を発揮します。
2020年にはオリンピックもありますし、今から用意しておいても損はない印象だけが強く残される結果です。


■メリットとデメリットがかなり明確に分かれる

ひとつ言えるのは、再生するソースがしっかりとメリハリの音がある場合、大きな効果を発揮します。
特に感じたのはMONSTER-HUNTER WORLDの臨場感の上がりっぷり。
PS4世代のゲームのPC版という事もあり、音質に関しては今回試した中では、音楽ソーを除けば最も品質の高い物だと考えられます。
その音のひとつひとつが、はっきりと強く感じられた点には称賛を送りたい。
モードをLevel2にしていた功績もあるのかもしれませんが、少なくとも筆者の耳には最も強く印象に残った音になります。
対して、動画に関しては、完全にソースに影響される事もわかりました。
何気に試したFate/stay night [Heaven’s Feel]は映画がソースになるわけですが、こちらはTVでは味わえない別格の音になります。
100%良くなるとは言えないのも事実なのですが、それでも一度使うと手放せないレベルの音になるのは間違いありません。

また、サラウンド感は、今まで使ってきた製品の中では比較的マイルドな部類に入ります。
これに関しては、サウンドカードや物理スピーカーの方が上というのは仕方ないと思うのですが、USBメモリサイズの大きさで、これだけの事が出来ると考えると気にもならないのが事実です。

それと、少し試したのですが、元々が2ch出力の音声を、補正でサラウンド化して、さらにXROUNDを使用すると効果が殆どなくなります。
破綻…とまでは言えませんが、根本的には音が軽い。
なので、おそらくソースは2chの補正は一切かけない物の方が良いと思います。


■唯一の難点

デメリット部分には触れたので、こちらはハードウェア面を。

今回の検証作業中、どうしても気になった点は、PCとUSB接続すると、強制的にUSB-DACモードになってしまう事です。
これは筆者の環境のせいでもあるのですが、基本的にフル充電でも7時間しかバッテリーが持ちません。
つまり、それ以上の動作には必ずUSBによる給電を考えないといけないわけです。
地味にここがネック。
付属のケーブルにケチをつけるわけではありませんが、USBのケーブルにPCとの接続を行わないようなスイッチをつけて欲しかった。
昨今、そういうケーブルも出ていますし、これは地味に今後に期待したい所です。

 

また、このレビューの下書きを書いている時点で、価格改定が入った点はもの凄く評価したい。

正直、音なんて聞ければ良いという方には、この価格帯は少々きつい印象がありました。

それが下がった事で買いやすい価格になれば、万人に対して気軽にXROUNDの音が楽しめるという事は、ユーザーにとってみてはありがたい事です。


■総評

根本的に、XROUNDの効果自体は不満はありません。
効果が強い弱いの差がはっきりする分、おや?と思う事は結構あるのですが、それでも素の音に関してマイナスになるという事が殆どありませんでした。
現存するほぼ9割9分のソースに対して、本体側が処理をする事で、原音とはまた違った驚きを感動を与えてくれる、非常に面白いデバイスです。
それはUSB-DACを使っても同じことが言えます。
元々、サウンドカード増設派の筆者から見ても、幅広い使い方が可能なXPUMPには大きな可能性があるように感じられます。

XPUMP自体、まだ登場して間もないという事もあり、なかなか扱いが難しいかもしれません。
それなりに分かっているユーザーが使うには『おっ!』と思わされる部分が多々あるのですが、過度な期待をすると逆に失敗する可能性もあります。
筆者が考えるXPUMPを使うのに適したユーザーは…

・煩わしい設定を考えたくない方
・スポーツの映像を見るのが好きな方
・それなりにオーディオ絡みの知識があり、出力先を用意出来る方

これらの方には、このXPUMPを是非試してもらいたい。
きっと今までにない衝撃的な体験を味わう事が出来るはずです。